炭焼記録No.4  記録:木曽野

焚き込み(1)(H15.7.28)
テンジョーイの次の日からただひたすら土天井を叩き続けた。その間、乾燥のための火を燃やし続けたので窯の中はカラカラに乾燥してきたようだ。昨日は乾燥のために燃やしている火が三度も炭材に燃え移る緊急事態が発生したのだ。加えて天井を叩く音も金属音になったので今日は焚き込みをすることにした。午前9時に明石さんが点火した。
焚き込み(2)(H15.7.28)
点火後、煙突の煙の温度は40℃から70℃へと順調に推移していたが、突然煙突からの煙が途絶えて窯口へ噴出してきたではないか。バックファイヤーだ。炭材が乾燥していたので一気に火が点いてしまったのだ。それからしばらく悪戦苦闘。窯口を小さくして段ボールの切れ端で扇いで風を送り込む。
焚き込み(3)(H15.7.28)
窯の上では木曽野建築所の二人が杉皮屋根の取付作業をしている。テンジョーイ以降は天井叩き作業に支障が無いようにシートで覆っていたが、大雨が近づいている予報もあることから屋根の取付作業をしていただいた。煙に燻されての作業は大変だった。
焚き込み(4)(H15.7.28)
バックファイヤーとの悪戦苦闘すること30分、いわゆる窯が怒ったのだ。窯の口を小さくして風を送り込んでなだめた結果煙突から順調に煙が出るようになった。煙の温度も83℃に上昇し窯がスヤスヤと静かになった。これから30時間順調に炭化が進んだのだ。
焚き込み(5)(H15.7.28)
夏休みに入ってから近所の小学校一年生のお嬢さん達が時々遊びにやってくる。炭窯が珍しいのだ。「これが炭を焼く窯だ。ほら白い煙が出ているだろう。」と説明すると。「♪♪炭焼くけむーりに、清和をしのーび。」と歌う。ナ、ナント地元、秋元小学校校歌の一節ではないか。確か私の在学中にこの校歌が出来た。その当時は炭焼く煙はどこでも見られた。しかし炭の需要が少なくなるとともに、学区内では炭焼く煙は絶えて久しいのだ。ムムッ早速コウカがあったのだ、などとシャレてみた。
木酢液の採取(H15.7.28)
木酢液は炭焼の重要な副産物だ。しかしこれに注目されたのはごく最近のことである。もちろん半兵衛さんのころは採取することはなかったであろう。木酢液は消毒・植物の成長促進・土壌改良・薬用など多用途である。しかし今回は窯づくりが目的だったため木酢液採取施設を準備してなかった。そこで急遽トタン板を丸め煙突の上に設置した。これが意外にも効果を発揮し、最終的には20gほどの原液を採取することが出来たのだ。その後木酢液採取施設は錆びないようステンレス製に作り替えた。
炭化(1)(H15.7.29)
窯はすっかり落ち着いてスヤスヤと炭化が進んでいる。煙の温度は83℃をずっと保っている。炭小屋の前では子供達が遊んでいる。明石さんはすでに次の窯入れのための炭木づくりに余念がない。日中安定していた煙の温度が夕方には95℃に上昇した。土天井の上には高温のため陽炎が立ちはじめたではないか。初窯は天井を乾燥させるため窯内を十分乾燥させたから炭化が早まるかもしれない。今夜は眠れないぞ!
炭化(2)(H15.7.29)
夜の9時に確認。一時的に雨が降ったせいもあろうが煙が随分と多い。煙の温度は依然として95℃を保っている。「メーワカレが近づいた」と明石さんがいった。
30日午前1時確認。ちょうど大雨となった。煙の温度を測ると90℃と下がっているではないか。なぜだ?確認すると、なんと急遽つくった木酢液採取用トタン板の溝を雨水が伝わってポタポタと煙突の中に入っているではないか。しかし早く発見できて良かった。木酢液採取用トタン板を取り外すと温度はすぐに上昇をはじめ110℃になった。83℃が30時間続き確実に炭化が進んだのだ。窯内の情報は煙しかないのだ。
炭化(3)(H15.7.30)
朝5時、雨はあがる。窯の煙が大きく立ち上っている。いくぶん黄色みを帯びてきた。きわだ色だ。風は無く穏やかだ。煙の温度は143℃だ。炭化は確実に進んでいる。今日の昼過ぎには止め窯になるのだろうか。
午前7時40分、煙の温度は174℃浅葱色になってきた。(写真)背後の山の朝霧と比べるとよく分かる。
午前9時、205℃、午前11時、241℃となる。煙は浅葱色から透明に近くなる。そろそろ精錬に入らなければならない頃だが明石さんはほかの仕事でいない。私には次の行動の判断が出来ず、ただ煙と温度計を見つめるだけだった。
止め窯(H15.7.30)
明石さんが12時20分にやってきた。安堵。煙の色を確認し小穴から窯内も確認し、ねらし(精錬)に入った。窯口の下の部分を開けて空気を入れガスを除くのだ。小穴から窯内をのぞくと、赤い炭材に琥珀色の炎が妖しくまといついている。この色はどこかで見たことがあるぞと考えたら、新日鐵君津製鉄所工場見学で見たのとおなじ感じがした。窯内の天井も真っ赤だ。粘土ぼた餅が亀甲状を描いている。ちょうど石積み天井のようだ。写真に撮ることが出来ず残念。煙突からの煙がほとんどなくなったので午後3時に止め窯にした。明石さんが窯口を塞ぎ私が煙道を塞いだ。

次 へ戻 るトップへ